精神科救急・急性期医療の経費

精神科病院では、入院にかかる費用について、入院時に担当の事務員や精神保健福祉士などが家族に詳しい説明をしています。

入院した当日は、家族も疲れていることが多く、入院にかかる費用の説明を受けても、なかなか十分に理解する余裕がない状況もありますが、たとえば、生活保護の申請が必要となる方などは、申請日を入院日にしておくことで、入院日(申請日)から生活保護が受けられるようにもなります。

必要最低限の説明を受け、手続きをすすめるようにしてください。不明確な点は納得がいくまで質問することがたいせつです。

措置入院・緊急措置入院の費用

措置入院、緊急措置入院でも本人の健康保険が適応されますが、措置入院、緊急措置入院は、行政の権限で入院治療を受けさせるため、入院した期間の医療費と食事代の自己負担分は行政が公費として支払います(一定の所得以上の方は自己負担になることがあります)。健康保険の適用は、精神保健福祉法第30条から第31条で公費よりも保険が優先して適用されることが定められているためです。

たとえば、精神科救急病棟に入院し、最初の1ヵ月(30日間)のうち、入院初日から5日間は、措置入院、6日目からは医療保護入院となった方の場合、措置入院中の医療費と食事代については、本人の健康保険を使い、自己負担分は公費で支払われます。

医療保護入院になった25日間の医療費と食事代についても本人の健康保険が使われますが、3割を自己負担分として本人(または家族など)が支払うことになります。

入院にかかる費用

精神科救急病棟と精神科急性期治療病棟では入院医療費が異なります。精神科救急病棟に入院した場合の医療費の目安は、1ヵ月あたり、約106万円前後といわれ、精神科急性期治療病棟の入院医療費の目安は、1ヵ月あたり約65万円前後になります。

これに食事代として1ヵ月あたり約2万3000円前後と入院生活における日用品代(洗濯代、おむつ代、理髪代など)が1ヵ月あたり1万円前後かかります。また、人によっては、このほかにタバコやジュースなどの嗜好品の費用が必要となる方もいます。差額ベッド代が設定されている病室を利用する場合は、差額ベッド代がかかります。

高額療養費の活用

医療費の7割は健康保険で支払われますので、精神科救急病棟に入院した場合の1ヵ月の自己負担分は、3割の約31万8000円前後(精神科急性期治療病棟の場合は約19万5000円前後)ですが、3割とはいえ高額になります。費用がかさむ場合、家計の負担が軽くなるよう、高額療養費制度を利用するケースがほとんどです。

高額療養費制度は、いったん病院の会計窓口で3割分を支払い、加入している健康保険の団体に高額療養費を申請することで利用できます。この制度では、収入や年齢に応じて自己負担する金額の上限(自己負担限度額といいます)が決まり、上限をこえたぶんは、後日、払いもどされます。

病院の多くは月ごとに入院費の清算を求めているので、たとえば、32歳で月収が30万円の人が精神科救急病棟に入院し、1ヵ月の総医療費が106万円だった場合、3割負担の31万8000円が請求され、いったん病院に支払わなくてはなりません。

そこで後日、加入する健康保険団体に高額療養費の申請を行うと図表5の計算式にもとづいて自己負担限度額が算定され、その月の自己負担限度額は8万8030円となり、病院に支払った31万8000円から自己負担限度額の8万8030円が差し引かれ、22万9970円がもどってくる計算になります。

70歳未満の人の場合、自己負担限度額は、所得状況などにより、上限が5段階にわけて決められています(図表5)。高額療養費制度は健康保険に加入している本人とその家族にも適用されます。ただし、「入院時食事療養費」や「入院時生活療養費」などは対象になりません。

自己負担限度額の算定方法 70歳未満の方

所得区分自己負担限度額
①区分ア(標準報酬月額83万円以上の方) 252,600円+(総医療費-842,000円)×1%
②区分イ(標準報酬月額53万~79万円の方) 167,400円+(総医療費-558,000円)×1%
③区分ウ(標準報酬月額28万~50万円の方) 80,100円+(総医療費-267,000円)×1%
④区分エ(標準報酬月額26万円以下の方) 57,600円
⑤区分オ(低所得者)(被保険者が市区町村民税の非課税者等) 35,400円
注)「区分ア」または「区分イ」に該当する場合、市区町村民税が非課税であっても、標準報酬月額での「区分ア」または「区分イ」の該当となります。