デイケアの治療の有効性と地域生活を支える必要性、そしてデイケアの将来

医療法人社団 原クリニック 院長
日本デイケア学会 理事長
精神科医
原 敬造氏

■デイケアが必要とされる意味

――日本でのデイケアのはじまりを教えてください。

新しいサービスとして、集団的な治療方法としてのデイケアが日本ではじまったのは、長期入院の患者さんが地域で生活するためにどんなサービスが必要かということからです。昭和38(1958)年、国立精神衛生研究所(現国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター)において加藤正明先生がはじめられました。

当初は大規模なデイケアが多く、しかも施設基準がとても厳しかったということで、なかなか広まっていくということには至りませんでしたが、その後、昭和63(1988)年の診療報酬改定で、小規模デイケアができたことにより、精神科病院だけではなく、精神科クリニックでもデイケアが行われるようになり、実施するところが増えていきました。この頃から入院患者さんが中心だったデイケアから、地域で生活を支えるためのデイケアへと変化していきました。

もともと地域で生活する方々のなかには、リハビリテーションが必要な方々が多くいました。とくにクリニックへ通院しながらデイケアを受けることができるようになったことで、デイケアが普及することになっていったという流れになると思います。

――先生ご自身がデイケアをはじめられたのは。

わたしが開業したのは、昭和63(1988)年、小規模デイケア実施のタイミングのときでした。開院当初から「地域精神医療」を実践したいという思いからの開業でしたから、地域で暮らす患者さんをサポートするためにも、生活を支える医療をやりたいと考え、デイケアに取り組むことになりました。最初は、スタッフの確保や準備をしてからのスタートでしたので、実際にデイケアをはじめたのは平成4(1992)年からです。その後、約26年間つづけています。

当初は小規模デイケアからはじまって、いまは大規模デイケアをやっています。集団療法を中心にしたリハビリテーションを実践するということでは、大小でのデイケアの本質的な変わりはありません。

―― なぜデイケアは必要なのでしょうか。

診察室だけで治療していると、薬物療法が中心の治療になりがちになります。そのような薬物の処方に頼る治療に、わたしは限界を感じていました。

患者さんの生活は多岐にわたっているわけですし、多様な生活をしているなかでの問題をみていかないと、なかなか病状だけで患者さんの生活全体をサポートすることはむずかしいと思っています。そういうことからも、多くの専門スタッフが集まって行う、デイケアでの集団療法は、地域生活をつづけていく患者さんとっては有効です。

精神科の患者さんは、どちらかというと引きこもりがちになる傾向があります。引きこもりの要因としては、社会的な偏見や、就労や就学のしづらさなど、いろいろな要素が絡んでいます。それらを外来の治療だけで支えるとなると、外来に来る日は外に出るけれど、そのほかの日は自宅で引きこもりがちでは、病状に影響を与えることにもなります。

デイケアは、医師との一対一の診察にくわえて、作業療法、レクリエーション療法、グループワークなどのいろいろな集団療法をプログラムとして取り入れられます。プログラムを多様化していくことで、患者さんが一人という環境から、同じ悩みをもつ仲間が集まって集団で考えることができるということにつながり、疎外されがちな状況から引きこもりになりやすい患者さんの状態を軽減することにもなります。それが、デイケア治療の大きな特徴のひとつではないでしょうか。

たとえば就労や就学したいという希望をもった患者さんは、人間関係の真っただなかでストレスの強い状態を感じながら就労・就学活動をしなければなりません。患者さんにとっては、とても高いハードルがあると思います。人間関係をスムーズにするためのコミニケーションの仕方ひとつとってみても、患者さんにとっては大きな障壁になり、強いストレスを感じることにもなります。そういうことに対応できるようなリハビリテーションを、仲間やスタッフと話し合ったり、相談し合うことで、ひとつひとつの課題をクリアしていくためのステップとして、デイケアが位置づけられていると考えています。

初出:『精神科医療ガイド2019』NOVA出版 2019.1より