企業・主治医との連携、復職レポート、復職後のフォローアップで再休職を防止

――「リワーク」の実践

医療法人 弘徳会 愛光病院
医師(副院長):
竹内 俊介氏
精神保健福祉士:三枝 アキ氏
臨床心理士:鳥居 優美氏
臨床心理士:岡田 英哲氏
作業療法士:小川 毅 氏

■利用者を多様な視点からみる

――リワークを開所した経緯について教えてください。

岡田 平成23(2011)年前後から、社会的にもメンタルヘルスが注目されてきていました。院内でも、いままでの統合失調症を中心とした治療だけではなく、気分障害や思春期などにも力を入れていくなかで、もっと何かできることがあるのではないかという議論があり、「リワーク(復職支援)を立ち上げるのはどうか」という声が上がりました。その後、医師、看護師、PSW(精神保健福祉士)、CP(臨床心理士)、OT(作業療法士)など、さまざまな職種が集まって会議を開きました。そして何度も検討を重ね、まずはCPとOTがプログラムを組み、外来作業療法の利用者を対象にした復職支援を実施することになりました。

平成25(2013)年1月にリワークが開所したときも、リワーク単独ではなく、デイケアの作業療法の一環としての復職支援ということでスタートしました。当初はパイロットスタディということで、医師、PSW、CP、OTが週3日、午前中に2~3名の利用者を対象にして行い、翌年の12月からは、現在と同じ定員15名、週5日午前と午後のプログラム構成になりました。

リワークの利用者は、退職や転職は考えておらず、現在休職している会社への復職をめざしている方が対象です。厚木、海老名、伊勢原など、近隣のクリニックの医師からの紹介に加えて、少しずつ積み重ねていった実績により企業の産業医や産業保健師などからの紹介も多くなってきました。また、リワークスタッフも当初からの医師、PSW、CP、OTに看護師と管理栄養士も加わっています。

――利用者の年齢層や職種には特徴がありますか。

三枝 年齢は、平成29(2017)年1月では平均39.6歳で、先日集計した際も40.0歳でした。年代別では20代の人もいれば50代の人もいますので、とくに年代が偏っているということはありません。業種は8割くらいが製造業の男性技術職で、理系の大学卒の方が中心になっていますが、最近は女性の利用者も年々増え、現在は15人中5人が女性となっています。

――利用者の方に性格的な傾向はありますか。

岡田 リワークというとうつ病の方が対象だと思われていることから、一般的にうつ病になりやすい性格といわれている、生真面目で完璧主義といった典型的なタイプと考えられるかもしれませんが、当院のリワークの利用者にはそういったタイプは少ないように感じます。傾向としていえるのは、自分が起こした問題を自分の問題として捉えられず、「会社が悪い」「なぜ自分がリワークをやらなければならないのか」といった、他罰的に捉える人が多い印象を受けます。

竹内 近年考えられているうつ病の症状は非常に幅が広く、同じような症状でもうつ病と診断される方もいれば、抑うつ状態、適応障害と診断される方もいますし、発達障害といわれる方もいます。当院のリワーク利用者にも、そうしたいろいろなタイプの方が混在していると思います。

強いて性格的なことでいうと、「自信がない」「なんでも悪い方向に考える」タイプが多いと思います。また逆に、楽天的すぎて自分勝手に作業をどんどん進めてしまったり、客観的にはできていないのにできていると信じこんでしまう方。そうした思いこみや偏りが仕事にも現れ、上司にいつも怒られたり、仕事ができないというレッテルをはられることになり休職に至った方、こういった方々は自分の考え方の偏りやアンバランスな部分に自覚がないため、100%の力が出しきれないことに気づいていません。そして、本人としては何が何だかは分からないままに、「何でいつも怒られるのだろう?」「自分が思っているようにうまくできない」と悩んでいる方が多いと感じます。

そこで、リワークを通して考え方の癖や、能力面における偏りを自覚してもらうことが重要なポイントになります。自分の弱い部分は他人に頼っていいということや、自分の得意な部分をもっと伸ばすような指導をすることによって、考え方や物事の捉え方が変わり、発揮できる能力に気づいていただけるようになります。また、プライドをもつことは大切ですが、自分の弱い部分にもきちんと目を向けられるようになることも必要です。

そこで、利用者が自分を自分自身で客観的に評価できるように、リワーク期間中に状況をみて心理検査を受けてもらうようにしています。心理検査は、利用者が客観的に自分の特徴を把握するために役立っています。

これまで向かい合ってこなかった自分と向き合い、変えていくことは辛いと思いますが、そこを乗り越えられれば、少しは肩の力を抜いて生きられるようになりますし、自分の能力をこれまで以上に発揮することにつながっていくと思います。

初出:『精神科医療ガイド2019』NOVA出版 2019.1より