精神科医療における心理職のはたらき

医療法人社団 光生会 平川病院 心理療法科科長 臨床心理士
淵上 奈緒子氏

精神科医療ではたらく心理職の現状

精神科医療における心理職の現状としては、平成26年度厚生労働科学特別研究「心理職の役割の明確化と育成に関する研究」報告の調査結果をみると、精神科病院には常勤・非常勤をあわせて3,700〜4,420人、精神科診療所には2,330〜3,190人の心理職が勤務していると推定されています。また、精神科医療機関に勤務する心理職の86%以上は「臨床心理士」の民間資格を有していますが、雇用形態は非常勤という不安定な雇用の割合が高いようです。

この調査から、実際の業務内容を見ると、心理検査に携わっていると答えた心理職が一番多く、次いで心理カウンセリングを業務として行う心理職が多く存在しています。心理職は保険診療上、「臨床心理技術者」という名称で呼ばれ、集団精神療法、精神科デイケア、精神科リエゾンチーム加算などが診療報酬の項目に挙げられています。また心理検査は、「医師が自ら、または医師の指示により他の従事者が自施設において、検査や結果処理を行い、かつ、その結果にもとづき医師自らが結果を分析した場合にのみ算定される」と記載されていますが、この「従事者」にあたるものの多くは心理職であるとされています。

現在、心理職を目指す方のほとんどは、民間資格である「臨床心理士」養成コースのある大学院で学び、資格を取得しています。しかし、養成課程の教育だけでは、医療に関する教育は十分ではないと感じており、多くの医療機関で働く心理職は医療に関する知識を現場に出てから学んでいく場合が多いようです。

心理職がはたらく領域

医療分野以外でも、心理職は幅広く活動しています。その分野としては福祉、教育、司法、産業など多岐にわたっています。

まず私がはたらく医療・保健領域での心理職の多くは病院や診療所の精神科や心療内科などに所属して、疾患の症状そのものの軽減を目指すだけではなく、さまざまな心理的な課題についてのサポートを行っています。また、アルコール依存や薬物依存などの専門治療の場で医療チームの一員に加わることもあります。そして総合病院では、がん医療における緩和ケアや周産期医療領域などへと活動の場が広がっています。さらに保健所、精神保健福祉センターなどでは、精神保健福祉相談員として、電話相談や健康増進の啓発活動に携わることもあります。

福祉領域では、児童相談所、療育施設、老人福祉施設、母子保健施設など、心理職が働いている施設が多数あります。乳幼児や知的障がい者、高齢者などを対象に、相談や支援業務にあたるほか、虐待やドメスティックバイオレンス(DV)被害者の精神的ケアにも携わることもあります。

教育領域では、学校や教育センターにおけるスクールカウンセラーとして、生徒と保護者、教職員を対象に、不登校やいじめをはじめとするさまざまな問題に対応しています。

司法領域では、家庭裁判所の調査官、少年鑑別所、刑務所などの法務技官、法務教官として勤務したり、保護観察所の保護観察官、警察の心理職員として勤務している人もいます。

産業領域では、企業における社員の職場環境や人間関係の相談といったメンタルヘルスケアを担当するほか、公共職業安定所(ハローワーク)では、面接などを通して就職や転職の支援を行っています。

複雑化する社会の中で、ストレス対策が叫ばれる日本では、心理的なケアが必要な人が増えています。近年は、「予防」に重点を置き、いま現在、抱えているさまざまなストレスにどう対処するかをじっくり考えていく役割として、心理職が求められているのではと思います。

初出:『精神科医療ガイド2017』NOVA出版 2017.1より