高齢者精神障がい者の在宅生活を支える訪問看護

大和田訪問看護ステーション 所長
夏堀響子氏

地域で「かかわりつづけること」が訪問看護の目標です

大和田訪問看護ステーション(以下、当ステーション)は千葉県八千代市にあり、開設して17年目になります。周産期や小児に特化した女子医大八千代医療センター圏内のステーションであることから、医療依存度の高い乳幼児も受け入れているほか神経難病の支援、癌のターミナルケアなどにも取り組んでいます。基本的にはどんな症例でもお断りしないことをモットーに訪問看護を行っています。

平成26年2月からは精神科訪問看護も開始し、現在約30名の方の精神科訪問看護を行っています。当ステーションは、20代から30代の若い利用者が多いのが特徴ですが、最近の傾向として、これまでに精神科の通院歴がなく、老年期になってパートナーの喪失や環境の変化などで精神疾患症状を呈し、はじめて精神科に通院や入院することになったケースの依頼が増えてきています。また、若年性認知症の紹介ケースも増え、老年期の精神障がい者の在宅支援の需要はますます高まると感じています。

1年間で夫と娘を亡くした70代の女性

1年のうちに夫と一人娘を亡くした70代の女性のAさんは、2人を看取って以来食が細くなり、るい痩が悪化し低栄養状態となったためかかりつけ医の指示により週に1回の訪問看護を開始しました。

かかりつけ医は診察のなかで、一般状態の観察以外にも栄養指導や精神症状の確認を丁寧に行い、状態の把握に努めていました。訪問看護師からの報告書も定期的に確認し、診察の場面で活かしてくれていました。ある日の診察でかかりつけ医が肝機能の悪化に気づき、飲酒量のチェックを看護師に命じましたが、本人は飲酒を否認していたものの、結果的には相当量の飲酒をしていたことが判明し、断酒の対応をしていくことになりました。

かかりつけ医と当ステーションは懇意にしていたこともあり、「このままでは命に危険があるので、なんとか対応してほしい。最悪の場合、紹介状を書くのでアルコールの専門病院に入院させてもいい」という相談を受けました。

Aさんはこれまでアルコール依存症の治療をしたこともなく、もちろん精神科への通院歴もありません。わたしたち訪問看護師は、Aさんが一時的に多量飲酒したからといって、すぐ専門病院の厳しい入院生活に移行していいのか、いまのAさんにはどういうコーディネートが必要なのかを検討し、何度も協議しました。

訪問看護師間でもそれぞれの価値観の相違が邪魔をし、意見がまとまらず、ほんろうされた時期もありました。しかし、ほんろうされつづけたことで次第に糸口がみえてきました。この過程を経たことでわかったことが、連携であり調整だと実感できました。

最終的には、「お酒を買えない環境にすることが治療的な効果をもたらすのではないか」という考えで意見がまとまり、まずは当ステーションで見守っていくという結論に落ちつきました。かかりつけ医も「酒を飲まない環境をつくれるのであれば、みなさんの考えでかまわない」ということでわたしたちの考えに賛同してくれました。

まずAさんが利用していた週1回の訪問看護を週6回の訪問看護に変更し、食事や服薬の管理、お酒がないかといったチェックをこまめに行うことにしました。訪問回数を増やすことによる費用の負担増加については、利用者の経済的負担を軽減するために自立支援医療の利用も提案しました。利用者を支えるためにはその人が受けられる行政サービスや制度をきちんと伝えることも、わたしたちの大事な役割だと思っています。

訪問してから1ヵ月ほど経つとAさんの体重も増え、体力ももどってきました。何か特別な看護をしたわけではありませんが、Aさんにとって体を気づかってくれる看護師が1日1回顔を出してくれることが安心につながり、改善につながっていったのだと思います。

とはいえ、いつまでも週に6回の訪問をつづけるわけにはいきません。再び飲酒をさせることなく、タイミングをはかり訪問回数を徐々に減らしていきましたが、Aさんは順調に回復していきました。

Aさんのケースでは、高齢であることや精神科での治療経験がなかったこと、近親者を2人亡くしたことなどの生活歴を検討したうえで、アルコール依存症の専門病院への入院を選択する前に、訪問看護の目と見守りを頻繁に入れることによって改善したケースになりました。