子どもと保護者に寄り添いながら社会とつなぐという役割

日本学校ソーシャルワーク学会代表理事
法政大学教授
岩田美香氏

スクールソーシャルワーカーとスクールカウンセラー

スクールカウンセラーについてはよく知られるようになってきましたが、スクールソーシャルワーカーについてはまだまだ認知度が低いと感じています。両者の違いを明らかにしながら、スクールソーシャルワーカーについて説明したいと思います。

スクールカウンセラーは、学校などの教育機関において、主に子どもや保護者の心理相談業務に従事する専門家として、教員と連携し不登校やいじめなど、主に学校内で起こるさまざまな問題の対応にあたっています。スクールカウンセラーには専門的な心理学や臨床心理の知識が必要とされ、主に臨床心理士が担っています。

スクールカウンセラーに対してスクールソーシャルワーカーは、とくに学校などの教育機関において、福祉的な視点から子どもと家庭の問題をとらえ、子どもと家庭を取りまく資源を使って環境を整えることで援助を展開していきます。そのため、子どもや保護者から相談を受けるだけではなく、児童相談所などの行政機関や福祉関係施設、また地域でサービス提供しているNPOなどとも連携し、子どもを支えるために必要な調整をしていくことになります。資格としては、福祉の専門家である社会福祉士や精神保健福祉士であることが望まれています。

スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーとも、子どもと保護者、教員とかかわる点は共通していますが、スクールカウンセラーが個人に学校内でかかわることが中心になるのに対して、スクールソーシャルワーカーは、学校内外を問わず、個人と、その環境要因としての学校外の医療施設や、生活保護なども含めたさまざまな社会保障・社会資源とかかわることが重要になります。

わたしは以前、スクールカウンセラーとして学校の現場で働いていましたが、スクールソーシャルワーカーへと移行していきました。スクールカウンセラー時代に、生活がかなり困窮している家庭の子どもたちのカウンセリングをしていると、子どもたちは、「将来はこんなふうになりたい」と夢を語るようになり、その子なりに自分の希望を見出して盛り上がりをみせるのですが、家に帰ると経済的困窮から生活問題に直面し、あるいは暴力をふるう父親を目の当たりにして、「やはりわたしには夢を語れない」と断念してしまう子どもたちへの援助に行き詰まったからです。

学校の教員がいくら教育を施そうとしても、子どもの生活環境が整っていなければ、勉強する時間も術も確保できません。だからこそ、子どもの心のケアだけではなく、子どもと家族の生活を支えていく役目が必要になります。しっかりした家を建てるためにはしっかりした土台がなければなりません。その土台は生活の基盤ではないでしょうか。そこを支えていくのが、スクールソーシャルワーカーの大きな仕事です。

比喩的にいえば、風邪を引いた場合に、その原因となっている風邪のウイルスに対応して治療していくのが医師であり、ソーシャルワーカーは「どうしてこの人の体にウイルスがはいることになったのか? こんなに寒いのに満足な服が着られず、暖房もいれられないとしたら、暖かい服をどうやって用意すればよいか、暖房をいれられるようにするにはどうすればよいか」と、原因の背景や環境から援助を考えていきます。

もちろん、スクールカウンセラーも子どもや保護者だけではなく、家庭やその周辺状況をみつめる視点は不可欠であり、スクールソーシャルワーカーも環境だけではなく、子どもや保護者をみつめる視点が欠かせないことは、いうまでもありません。