広域な地域連携の強化と「抱える環境」への意識

東邦大学医療センター 佐倉病院
小児科 臨床心理士
東山ふき子氏

国内の精神障害者数320万人のうち未成年者の精神障害者数は18万人弱におよび(厚生労働省「患者調査」2011年)、少子社会にありながらもその数は増加傾向にあります。

とくに小児では、親の精神的な不安や家族関係、貧困等の生活環境を因子とする身体表現性障害による小児科への受診も増えてきています。

現代社会の象徴ともいえる精神疾患患者の約半数は14歳までに発症するともいわれているため、子どもの心の不調のサインをみのがすことなく、早期から適切な治療や支援を開始・継続することにより、二次障害を防ぐことが重要と思われます。

子どもの心の不調のサインは、疾患として正しく認識されることが少ないため、早期発見や対応の遅れが指摘され、児童精神科医や小児科医の確保目標や、児童思春期専門の医師、専門スタッフ等の養成・研修、精神保健福祉センター等を受け皿とした専門相談窓口の充実が求められています。

そのような状況のなか2004年には、市町村での乳幼児健診時の発達障害の早期発見、都道府県における発達障害の専門的な診断の実施と支援を行う医療機関の確保が、発達障害者支援法に盛りこまれました。

とはいえ、児童精神科領域をカバーすることのできる専門医や医療機関は限定されていることから、翌2005年、「『子どもの心の診療医』の養成に関する検討会」が設けられ、2007年度の報告書において、子どもの心の診療を行える医師の確保・養成を目指し、中心的な役割を担う入院治療機能をもつ中核的医療機関を各都道府県に1ヵ所以上整備した診療体制を確保、診療・研修のための経済的支援の充実等が提言され、2008年から3年間のモデル事業として取り組まれたのが「子どもの心の診療拠点病院機構推進事業」(以下、病院事業)です。

病院事業では、都道府県における拠点となる医療機関に対して、①子どもの心の診療(連携)支援事業②子どもの心の診療関係者研修事業③普及啓発・情報提供事業等を行うとして院内に支援センターを設置することを掲げ、2011年3月までに全国11自治体に設置されました。

病院事業の実施を機に児童相談所、児童養護施設等への医師の派遣がはじまり、児童福祉施設にも医療的な支援が実践されることになりました。また、病院事業に取り組んだ自治体では、子どもの心の不調の際に相談先がわからないという人の割合が減少したという調査結果をもとに、後継事業として2011年度から都道府県を事業主体とする「子どもの心の診療ネットワーク事業」(以下、ネットワーク事業)が開始されました。

ネットワーク事業は、都道府県の拠点病院を中核に位置づけ、一般病院・診療所等の地域の医療機関や児童相談所、保健所、市町村保健センター、児童福祉施設、教育機関、司法機関等の広域な地域諸機関の連携により、心の問題をもつ子どもと家族の支援体制の構築を図るとされ、事業の実施内容として以下の項目が設定されました。

① 子どもの心の診療支援(連携)事業

  • 地域の医療機関から相談を受けたさまざまな子どもの心の問題、児童虐待や発達障害の症例に対する診療支援
  • 地域の保健福祉関係機関等から相談を受けたさまざまな子どもの心の問題、児童虐待や発達障害の症例に対する医学的支援
  • 問題行動事例の発生時における医師等の派遣
  • 地域の保健福祉関係機関等との連携会議の開催

② 子どもの心の診療関係者研修・育成事業

  • 医師及び関係専門職に対する実地研修等の実施
  • 地域の医療機関及び保健福祉関係機関等の職員等に対する講習会等の開催
  • 子どもの心の診療に専門的に携わる医師及び関係専門職の育成

③ 普及啓発・情報提供事業

  • 子どもの心の診療に関する情報を幅広く収集し、地域の医療機関、保健福祉関係機関及び地域住民に対して、ホームページ等により適切な情報を提供するとともに、子どもの心の問題について普及啓発を図る

ネットワーク事業の実施状況は、2012年度で14自治体にとどまり、わたしが所属する千葉県にある東邦大学医療センターにおいても十分とはいえません。子どもたちの成長と生命にもかかわる事業だけに、1日も早い体制整備と質の均てん化が望まれます。