児童思春期精神科医療におけるチーム医療

医療法人カメリア 理事長 長岡和氏
医療法人カメリア 横浜カメリアホスピタル 臨床心理士 山内奈緒子氏

子どもの診療のむずかしさ

不安、恐怖、怒り、引きこもり、リストカット、暴言や暴力、希死念慮。児童精神科の治療を求めて病院に受診する子どもたちの状態像はさまざまです。言葉での表現がまだむずかしい年齢であればなおのこと多岐にわたります。虚言や盗癖といった行動面の症状を示すこともあります。

初診時は予診とあわせて子ども本人とその親から2時間ほどじっくり話を聞いていきますが、児童思春期精神科医療では、子どもと親双方に問診していくため、おとなの問診とくらべると単純に倍の時間がかかります。このとき、医師と臨床心理士(以下、心理士)はペアを組み、医師は問診、心理士は子どもや親が話す内容を記録していくことにしています。

親への問診は子どもが生まれる前の状況までさかのぼったところから聞いていきます。望んだ妊娠であったか、子育てに対する考え方、子どもの育てにくさ、地域や学校とのかかわりで起きたエピソードなども聴取します。

心理士は、親の表情や態度、身だしなみ、子どもに対する気配りなどにも注意を向け、言葉のやり取りだけでは伝わってこないことも併せて家族関係の全体像をつかもうとします。

こうした問診で親の精神疾患が疑われたり、ネグレクトなどの不適切な養育態度が発覚したりすることはめずらしくなく、それらの情報も子どもの治療計画に反映していくことになります。

成人でも子どもでも診療において精神科医は5つの観点から患者を診ます。精神疾患の有無、次に発達の問題、そして知的障害がないか、またパーソナリティの問題も診ます。

最後の観点は、精神症状が身体的な問題から生じているのかどうかをみきわめることで、これはとくに子どもの診療において見落としがちなことです。たとえば、子どもが「イライラして眠れない」と訴えており、その原因がアトピー性皮膚炎の影響であると疑った場合には、皮膚科または小児科の治療を優先するように伝えます。痒みが治まるにつれてイライラと不眠が消失すれば精神科の治療は不要になります。

加えて子どもの入院後の生活では、集団適応をつうじて明るみに出る対人関係の未熟さ、親と面会したあとの葛藤状況といった、不確実で潜在的な問題があることを念頭においておかなければなりません。

一方で、複数の重篤な状態像が合併するケースも増えてきています。たとえば発達障害と反抗挑戦性障害というケース、心的外傷後ストレス障害と嗜癖化したリストカットや過食嘔吐などが併在しているケースなどです。

こうしたことを踏まえ、あえて診断名をつけないまま経過を診ていくケースも少なくありません。